翌日

モノ造り日記

昨日


2月23日(金) 久々に降る夜の雨 寒さに耐えた涙の重さ ってか


昨夜十時過ぎに見が覚めたまま、原稿を書き続け朝が明けた。ボーっとしたまま、青山墓地を抜け乃木坂まで散歩に出た。■晴れ間は今日までは持つとの天気予報。空は少しもやっており、下り坂の天気を予測させた。北西から風が吹き始めていたが、一昨日からの春のぬくもりは、確実に木々のDNAには伝わっていた。
■青山墓地は桜だ、と思っていたが、梅の木もけっこうある。赤い蕾(つぼみ)のせいで赤みがさして枝に埋もれて地味だが、季節を先取りしてパッと咲く桃色の花には、桜とは違った、とてもパーソナルな、一対一の、他が入り込めない、甘酸っぱい禁断の関係が成立する。内緒話をしていると、数回くしゃみが出た。来たな今年も。
■花粉症の到来である。医学的見地からすると、私は極度の花粉症らしいが、苦にしたことはない。マルセル・プルーストに比べれば、なんのことはない。起き掛けのクシャミ十連発。鼻詰まりや頭痛。それはそれで受け入れてしまえば、そんなものだ。
■ところで、乃木坂では朝飯は食えないことが判明した。何もない。「mini stop」と「ローソン」はすぐに見つかったが、ちょっとした朝の定食にありつける場所はないのだ。もしも、そんなところがあったら、教えてほしい。
■しょうがないので、近々お世話になるはずである「乃木坂歯科」の場所を確かめ、週末直前で張り切る勤め人とともに、地下から地上へ這い出す通勤途中のひとたちと階段を上る。目の前で階段を闊歩(かっぽ)する足をじっと眺めながら、戻ったら楽だろうな、戻ったら苦労するだろうな、戻ったらごまかすだろうな、戻ったら週末が楽しいだろうな、戻ったらオフがあっていいな、でも、もう二度と勤め人には戻れないだろうな、戻りたくないな、などと思いが巡るのだった。うらやましさと虚しさと…、階段を上る靴音が響く。
■乃木坂から、なんでこんなとこにあるの? という東大なんたら研究所を左に見ながら、外苑東通りを越える橋を渡り、外苑西通りに渡した青山橋を通って事務所に戻る。所要時間十五分。
■しかし、関東平野という名称は辞めて欲しい。平野じゃないよ。こんなに起伏が激しい平野って、ないんじゃないの? 好きだけど。
■事務所に戻り、週が暮れるまでに完成せねばならない原稿を書いているうちに、いつの間にか夕方となり、港区に53箇所あるという“夕焼け小焼け”のチャイムを聞くはめとなった。この午後5時に鳴るチャイムを気分よく聴けるかどうかが、一日のけじめとして大いに役立っている。あのチャイムは、大地震などの非常時に放送が流れるかを確認するためのものらしい。流す側ではかなり使命感に燃えて放送しているのだろう。まあ、聴く側からすれば、ちょっと、チャイムの終わり方が尻切れトンボじゃないのかあ、とチェックしてるらし。あっしは、どうでもいいが。
■チャイムが鳴り止まぬうちに、来訪者がどっと押し寄せ、納品チェックとあいなる。自分が書かねばならない、いくつかの原稿は仕上がっていなかった。
■なぜかやる気満々の女子高生には、こと細かに手取り足取り、かなり厳しく指示を出す。自分の納品が済んでないくせに、他人の納品には厳しい小心者。『Pannya@Papas』で買ってきたケーキを振る舞ったりして、飴と鞭を使い分けるってか(笑)。“若さ”は、それだけ武器になる。
■午後9時27分。二階のベランダに出てタバコを吸っていると、ポトリときた。左手の手のひらに、ポトリときた。灰が落ちた! まずいぞ、熱いぞ、と一瞬慌てたが、なぜか熱くない。もうひとつポトリと来た。ん? そうか、雨だ…。久々の雨のしずく。■午前2時13分。目を覚まして26時間が経過しようとしていたが、意識はバリバリ。いつまでも眠らないでいられそうな気がしていた。そんなとき、ピッポォン!と、チャイムが鳴った。常時接続しているメールサーバーがメール到着を知らせる音だった。って、いつものことだから、取り立てて言うほどのこともないのだが、…。今夜は、さすがに、ビクッとした。まだ、できてないからだ…

 川口様 ○○です。
 原稿は如何ですか?
 月曜日午前中までにいただけると助かります。
 よろしくお願いします。

■水曜日までに書き上げるはずだった原稿。N編集部ではかなり焦っているはずだが、どんなときでも、こんな感じの心優しい言葉を投げてくる。執筆者を生かすも殺すも編集者の腕次第。すぐにブチ切れる忍耐力に欠けるあっしにはできない芸当…。感謝。

■メッセージ、長過ぎるぞ …… と。