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モノ造り日記

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2001年6月6日(水) コースティング


●解禁直後のうに食わん 白パイつるり ノリ軍艦にうにはなし●

■コースティング

 ある法則を導き出す伝統的な手法として、演繹法と帰納法がある。実験による事例を積み上げて法則を導き出す手法と、立てた仮説を証明する手法。日本には、演繹でも帰納でもない、その中間に位置する「アブダクション」という方法がある。提唱したのは川喜多二郎氏。
 中学三年生のときに衝撃を受けた彼の「発想法(アブダクション)」には、現在でも影響を受け続けている。
 まず、ぼんやりと仮説を立てる。次に、関係のありそうな事象をひたすら集める。集めた事象が発するメッセージに耳を傾け、関連するかもしれない事象どおしを近くに置き、グループ分けして、グループ名をつける。次に、そのグループ同志の関係を考える。対比、階層構造、原因結果、などの関係を確認しながら構造をつくっていく。そうすると、全くそれまで思いもよらなかった法則が見えてくる。最初に立てた仮説は、単なる誘い水。経験的に考えていら予測など、たわいも無いことだと、思い知らされる。それが「発想法」という手法だ。
 とても辛く楽しい作業となるが、発想法を実行する上で最も重要なことは、新しい法則が降りてくることを“待つ工程を作ること”。その工程を、川喜多氏は「コースティング」と呼んでいる。海岸に沿って小船をゆっくり走らせ景色を楽しむという意味だ。少し離れたところから眺めているうちに、脳が少しずつ勝手に発酵し、自分が考えも及ばなかった全く新しい法則や理論を意図的に導き出す手法だ。

 今の自分にはコースティングが必要だな、と、そんな大義名分をひっさげて、調布にいる友人M氏宅まで麻雀をしにいった。

 右手で新しいパイを引くときに、パイを見ないでも親指の腹でパイに刻まれた文字を読むことを、モーパイ(盲パイ)という。モーパイが苦手な人にも、絶対に分かる牌(はい)がある。何も書かれていない「白(パイパン)」だ。ツルッとすべるから間違えようが無い。
 今夜は、頼んだ寿司の出前の中にパイパンが入っていた。四人とも同じメニューを注文したにも関わらず、私の重箱に入っていた“うに”を見ると、ノリの軍艦だけで主役の“うに”が盛られてない! いや、こんなことってあるんだわいな、と、皆、大笑い。
 冗談半分にM氏亜が寿司屋に電話を入れると、ごめんなさい、すぐに替わりを届けますから、という。いや、いいよ、次に気をつけてくれればいいから、と言ったが、“替わり”を届けるから、と寿司屋は言い張った。じゃあ、届けてよ、とM氏は折れた。
 電話を切ってM氏は皆に言った。

「でも、その“替わり”に何が届けられるんやろ?」

「もう一人前でしょう」
「俺もそう思うな」
「いや、うに二巻に太巻きだと思う」
「それはあんたの好みでしょ。うに四巻に決まってるわよ」

 などと、言い合っているうちに、はたしてひとつの重箱が届けられた。中に入っていたのは、さっきよりはるかに上質のうにが五巻であった。皆ハズレ。ニアピン賞は認められず。寿司屋に申し訳ないので、次に寿司の出前を頼むなら、この寿司屋からにしようよ、ということに落ち着いた。
 食い物の恨みは恐ろしいのだ。

 零時4分布田駅発、新宿行き最終電車に飛び乗り、明大前で井の頭線渋谷行き最終電車に乗り換え、渋谷からトボトボと南青山まで徒歩で帰宅する。
 麻雀の結果はさておき、ワイワイガヤガヤとゲームをプレイできたことと、パイパン事件で盛り上がった平和なコースティング。これで懸案のあのテーマについて、新しい機軸が天から舞い降りてくれば申し分ないのだが、はてさてどうなることやら…。


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