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2001年12月2日(日) イッセー尾形の一人芝居、絶好調


遠方より来たる朋、西へ帰る

■携帯電話で帰る直前の朋をつかまえる

正午ピッタリに目が覚めたとき、周りには誰もいなかった。昨夜の宴の名残りが、そこかしこに残っていた。シャワーを浴びてスッキリすると、「イッセー尾形の一人芝居」を観に行くと言っていた朋の言葉を思い出した。

携帯電話に連絡すると、女友達と遅い朝飯を食ったところだ、という。「芝居が始まるのは何時からだい?」 「午後2時から」 「じゃあ。少し時間があるじゃない。そこから『大坊珈琲店』までならすぐだし、そこで待ち合わせしようよ」ということになった。

実際は、ほとんど時間がなかった。起きたばかりで深煎りの濃い珈琲はさすがに飲めない。ミルクコーヒーを私は注文したが、ほぼ一気飲み。すぐに店を辞し、原宿にある劇場へと向かった。

■クエストホールへ向かう表参道はお祝いも控えめ

朋は名古屋を拠点に活躍するデザイナーだが、東京に妹夫婦が住んでいる。チケットを手に入れたので、観て帰れば、と妹から誘いがあったらしい。

芝居がある『クエストホール』は原宿駅のすぐそば。表参道沿いにある。『大坊珈琲店』のある表参道交差点から神宮前交差点まで坂を下り、原宿まで坂を上れば目の前にある。徒歩で十分ほど。

一本道だから間違えようもないし、旅慣れた朋には付き添いなぞ、かえってうざったいに決まっているが、カラリと晴れ上がった表参道を散歩しない手はない。

道沿いに珍しいものが見えた。小さな日の丸が連なっている。昨日、内親王誕生を祝っているお印に間違いない。お生まれになったのが、直系の世継ぎとならない女子であったためか、お祝いも控えめである。

参道は大変な人、人、人。道を下り切り、上り始めると、歩いている人たちの世代が一気に若返る。違う人種の人並みにもまれると刺激的で悪くない。

■当日券をあっけなく手にする

坂を登りきった右側にあるビルの4階までエレベータで上がる。『クエストホール』がある。ビルの4階にあるホールまで朋と一緒にエレベータで上り、朋の同伴者たちに入口で挨拶をして帰る…。

そのつもりだったのだが、入口でキョロキョロしていると、「最前列の座布団席ならチケットまだありますよ」と、若いスタッフの一人から声を掛けられた。「え、チケットあるの? だったら、観させてもらうよ」

というわけで、夕方まで観劇することなった。予約だと三千円だが、当日券は五千円と高くなる。しかも、座布団一枚に床座り。腰の痛みと足のしびれが付いてくる。しかし、舞台に最も近いかぶりつき席。映画を最前列で観る私にとっては願ってもない。役者のつばが飛んでくれば、本望である。

■イッセー尾形の仕掛けに酔う

二時間ほどの公演で演じられる演目の数は、だいたい5本から6本だが、今日は本数が8本と多かった。いつものことながら、すべて新作。本数が多いと短めの習作が必ず入る。

イッセーを取り巻く仲間内の若いスタッフには受けても、舞台ではスベるネタもあるだろう。すごく良かったのに、最後の詰めに迷いが見えて、台無しになるときもある。そこまでやるかい、もう参ったよ、と悦に入るときもある。いずれにしても、イッセー尾形は必ず仕掛けてくる。とにかく、こちらも素(す)にさせられてしまうのが凄い。

ひとつのコントが終わると暗転となるが、すぐに舞台はぼんやりとほの暗い明かりで照らし出される。イッセーは舞台の袖。衣装ケースと化粧台に挟まれた小さな空間の中で、次の芝居への準備にかかっている。かつらを取り、シャツのボタンをはずして脱ぎ捨て、ベルトをゆるめてパンツを降ろし、トランクス一枚となり、汗をぬぐう。ハンガーから次のコントに使う衣装を選び、一枚ずつ身に着け始める。また汗を拭い、鏡をのぞきこみながら紅を塗って化ける。水を飲む。観客から丸見えの場所で、次の物語への想像が膨らんでいく。小西真奈美みたいな女優がこれやるわけにはいかんものか、とオヤジは思う。

突然、暗転になる。次の演目が始まる合図だ。観客は息をひそめて真っ暗な舞台を凝視する。数秒後、スポットライトが眩しく舞台の一点にあたる。照らし出されたイッセーの表情は尋常じゃない。これで観客たちは一瞬にしてイッセーの世界に引きずり込まれる。これから演じるキャラクターの心情を、この最初の一瞬にイッセーは凝縮するのだろう。イッセーがもう少し歌がうまかったら、と思う。

午後4時半、朋と別れ、大阪寿司『八竹(はちく)』で押し寿司を食して帰宅。昨夜の宴のせいか、イッセー尾形の毒気に当たったのか、疲れがどっと噴出し、早々にソファーの上で夢心地となる。

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