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2002年11月6日(水) 快晴。広告を考える


●赤坂見附駅ホームには物語る広告あり●

■人が集まるところに広告あり。この製品どこかで見たことがある、この会社の名前どこかで聞いたことがある、という安心感。海外旅行で飛び込んだスーパーマーケットで馴染みのパッケージや会社名の入った製品を目にすると、ついそれを買ってしまう。■良い製品を使いたいのに、製品の優劣を吟味する時間と労力を惜しむ消費者たち。賢い消費者もいるが、そんな大多数の消費者たちを扇動するのは広告だ。その効果は絶大。■吊り上げたサカナに餌はいらない。広告費には金をかけても、どのように利用すればよいかをアドバイスすることに、企業は力を入れたがらない。そんなわけで、うちのような仕事が発生するわけでもある。■製品を選ぶとき、どこかの広告で吸収した意識のどこかに残っているイメージや名前やサウンドが、AでなくBを手にとらせる。■現在やっている珈琲のウェブサイトを今月末から本格的に稼動させるために、それなりの広告を検討中。

■広告の中には景観を損る見苦しいものもある。しかし、電車の中吊り広告や、地下鉄のホームに沿って並ぶ広告などのように、手持ち無沙汰な時間つぶしを埋める貴重な情報源となりうる場合もある。■地下鉄銀座線、赤坂見附駅のホームでは『文春文庫』の広告の前に必ず立つ。表参道に到着しドアが開くと、階段の降り口に一番近いからだ。理由はそれだけではない。■この広告はどこかのバーのような雰囲気。年季の入ったカウンターに載っている本は『あ・うん』。陶器のおわんの中にはあったかいミルクコーヒーが入っている。喫茶店だ。ホーロー製の水差し、小さめのカットグラス、鋳鉄製の灰皿。このカウンターのいでたちは、あそこしかない。表参道にある『大坊珈琲店』だ。■『あ・うん』の作者である向田邦子氏は、この珈琲店と目と鼻の先に長い間住んでいた。何度となくこの珈琲店に通ったことだろう。大好きな作家が大好きな珈琲店を馴染みにしていたとあれば、嬉しくないわけがない。■赤坂見附の駅を利用することはひと月に二三度。その日は決まってこの広告の前に立ち、帰宅すると『父の詫び状』や『思い出トランプ』を開いてしまうのだ。

■名古屋のデザイナー・てろっぷ氏からいただいた特製ベーコンを使った雑炊で朝食。燻製した食材をスープの出汁に使うと、全体の味を支配してしまいがちだが、量を控えめにすると独特のコクがいまいち。量を多めでうまく料理できる方法はないものだろうか。

■快晴の午後。三田で会議である。南青山から自転車で三田まで走ることにした。無断変速は人力で調整せねばならない。変速ギアがなくても、譲り受けた自転車は今日も快調。とはいえ、三田からの帰り道はほぼすべて登り坂。きっと足が張るに違いない。そんな決心をしていざ出陣という矢先、スタッフも同行することになり、急遽、自転車での移動がキャンセルとなってしまった。タクシーを飛ばす。■日比谷通りで何かあったらしく、車がまったく動かなくなってしまった。携帯電話でその旨を先方に伝え、なんとか事なきを得たが、会議に遅刻するなんて何年ぶりやら。

■バルセロナから帰って二週間。時間はまだ止まったまま動かない。緊張のたがが外れているのかもしれないので、注意せねば。仕事は進めねばならないのでやっているが、ウェブページの更新はとどこおりがち。前日までの話はまた後日に更新するとして、とにかく本日分だけアップしておくことにした。

■冷え込んできた夕方から、永田町で会議。日経BP社出版局にてイラストレーターを選定。落ち着くべき人に落ち着いた気がする。そのまま、編集部の山岡氏、礒田氏と連れ立って四谷三丁目にある韓国家庭料理屋、『妻家房』(さいかぼう)へ流れる。いわゆる焼肉屋ではない。以前、店頭で購入したポッサムキムチがいまいちだったので、長いこと敬遠していた店。世評はすこぶる良いので、今晩思い切って行ってみることにしたのだ。二階の食堂で食した料理の味は上品でコクがあり、驚いた。お値段も控えめ。若い女性が客の大半を占めるのもうなずける。

■帰宅すると、午後に打ち合わせした著者から、原稿がさっそく送られてきていた。レスポンスが速いのは、力だ。

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